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給与所得控除

第201_1号 2011年2月

1.はじめに

平成23年度の税制改正で給与所得控除の改正がありました。給与所得控除はサラーリマンに認められた必要経費と言われるもので、節税で良く使われるものです。

2.給与所得控除とは

個人の事業所得は「事業収入-必要経費」で計算されます。個人の給与所得も「給与収入-給与所得控除」で計算されます。個人事業の必要経費は実際に事業のために使ったものですが、給与所得控除は実際に支払いがなくても、一律に認められている給与所得者の必要経費なのです。

3.個人の事業所得を給与所得にする

個人事業で事業収入が1,300万円、必要経費が500万円で、事業所得が800万円の個人事業主が法人を設立して個人事業をすべて法人に移行したケースを考えます。この状態で個人事業を法人に移行すると、法人の売上は1,300万円、経費は500万円で利益は800万円です。

ここで法人の代表者である個人に800万円の給与を法人から支給します。800万円の給与は法人の経費となりますので、法人の利益は0円となります。

結果として、個人の所得が法人を介することで、事業所得から給与所得に転換したこととなります。

4.個人の税金はどうなったか?

個人の税金は、事業所得が800万円ですと約190万円になります。一方800万円の給与の給与所得は給与所得控除200万円を差し引いた600万円となり、個人の税金は約130万円となります。所得の種類が変わるだけで約60万円も税金が安くなりました。これが給与所得控除を利用した典型的な節税スキームです。

5.給与所得控除に上限が

現在の給与所得控除は、給与が増えれば増える天井知らずの状況です。1,000万円の給与で220万円、1億円の給与で670万円の給与所得控除となります。

改正により、平成24年から給与所得控除に上限が設けられます。給与額が1,500万円で245万円の給与所得控除額が上限になります。1億円の給与の場合、給与所得控除は245万円となり、改正前よりも425万円も減額となります。

6.役員給与は更にきびしく

現在では、給与所得控除の扱いは従業員でも役員でも同じ扱いです。しかし、来年からは役員に対する給与が2,000万円を超えると給与所得控除が上限の245万円から減額され、以下のようになります。

①給与額2,000万円超~2,500万円以下
245万円-(給与額-2,000万円)×12%
②給与額2,500万円超~3,500万円以下
185万円
③3,500万円超~4,000万円以下
185万円-(給与額-3,500万円)×12%
④44,000万円超
125万円

現在は4,000万円の給与で370万円の給与所得控除ですが、来年からは約3分の1の125万円になってしまうのです。

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