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役員報酬を理解する

第246_1号 2014年11月

1.はじめに

税金はその種類も多く、条文に規定されている文章も難解です。私たちは税金の仕組みをお客様に分かりやすく説明して、そして理解していただくことが必要と考えています。「税法でこう決まっているから」ではなく「なぜ税法ではこのように決まっているのか」を今回は役員報酬を例に紹介します。

2.役員報酬は誰が決める

会社法(会社の設立や組織の運営などを定めた法律)では、「取締役の報酬等は株主総会の決議によって定める」としています。

つまり「取締役○○」の報酬は株主総会における株主の過半数の賛成票で決まります。

中小企業では、「株主=取締役」のケースがほとんどですので、自分の給料は会社法上では自由に決められるのです。

3.税務署が決める?

新規に相談に来られたお客様で、「税務調査が入り、役員の報酬が高額すぎるとして、税務署が一方的に低い役員報酬額を決めてきた」と言われていた方がいらっしゃいました。役員報酬は株主総会が決定するわけなのですが、これはどういうことでしょうか?

4.過大な役員報酬

法人税法で、「役員に支給した給与の額が、その役員の職務の内容、その法人の収益及び使用人に対する給与の支給状況、類似法人の役員に対する給与の支給状況等から見て、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合には、その超える部分の金額は過大な役員給与として損金の額に算入されない」と規定しています。

つまり、税務署から見て不相応に高いと思われる役員報酬の金額は、会社の損金に入れることはできないということです。そこで税務調査をした調査官は「あなたに相応な損金に算入できる役員報酬は○○円です」と納税者に伝えたのです。

5.なぜ損金算入されない

役員報酬は役員としての職務執行の対価です。従業員が労働の対価として給料をもらうのと同じようなものです。

税法では役員としての職務執行の対価として妥当な役員報酬は会社の損金として認めるけれども、妥当でなく高すぎる金額は株主配当と同じような利益処分としての賞与に該当するとして会社の損金として認めません。

6.職務執行の対価

職務執行の対価として役員報酬額が妥当かどうかなんて誰も分かりはしません。

税務署も会社の役員の行動を日々見ているわけではありませんので、自信を持って「妥当でない」とは言えません。ですから税務署が無理なことを言ってきたら反論することが必要です。

7.期首から3か月以内

役員報酬は株主総会で決定しますが、税法では期首から3か月以内に決定し、一度決めたら原則として同じ金額を支給しなければ、役員報酬の額を全額損金とすることはできないとしています。

なぜこのような規定を置いているかというと、役員報酬を利益が出たら上げて、利益が出ないとなると下げることができれば、会社の利益調整ができてしまうためです。

ですから、期首から3か月以内に向こう1年間の役員報酬を決めて、「動かすな」ということになっているのです。

8.事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、期首から原則4か月以内に、「何月何日に役員の誰々にいくらの役員賞与を支給します」という届出を税務署に提出する制度です。

この届出を出すと、役員への臨時の給与が会社の損金になります。この届出を出さないで支給する臨時の給与は役員賞与として一切損金となりません。

事前確定届出給与は事前に支給日と金額を決めるもので、「利益が出たから後決めで支給する賞与」といった性格のものではありません。

「事前に決めたものを支給しても利益調整には使えない」ということで損金算入が認められているのです。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士・行政書士 井上 修
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