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コロナ税務申告・納税

第313号 2020年06月

1.はじめに

コロナウイルスによる非常事態宣言が解除されましたが、中小企業に与える経済的な打撃はかなりのものとなっております。そんな中で待ったなしで来るのが税金の申告と納税です。この申告と納税に関して特例措置が講じられていますので説明いたします。

2.中間申告・中間納税について

前期の税務申告において一定の税額が生じると、その税額をもとに役所から中間申告とその納税に関する書類が送られてきます。これは今期に発生するであろう税金の一部をあらかじめ前払いしてくださいという役所からのお願いです。

今期も利益が出て前期並み以上の納税が見込まれるのであれば、そのまま中間申告をして納税することになります。しかし、コロナの影響で今期は赤字が覚悟される場合は、中間納税などしたくありません。

この中間納税を回避するには、中間時点で仮決算をして赤字の中間申告書を提出するのが通常です。しかし、この作業も手間がかかり会計事務所への費用も発生します。

そこで国税では、コロナの影響等で中間申告書の提出が困難な場合は、できることとなった時点で提出すれば、事後的に提出期限の延長を認めています(中間申告書の余白に提出期限の延長申請である旨を記載)。

さらに、中間申告書を提出することが困難な状態が、確定申告書の提出期限まで続く場合には、その中間申告書の提出は不要とされています(確定申告書の余白に中間申告書はコロナの影響で提出できなかった旨を記載)。

3.敢えて課税事業者となり還付を受ける

現在、消費税の納税義務のない免税事業者であっても、コロナの影響で今年の 2 月から来年の 1月までの間にひと月でも、前年比概ね 50%以上売上が減少している月があれば、その月を含む事業年度を消費税の課税事業者とすることができます。

売上高が税込で 330 万円、家賃や仕入などの消費税がかかる経費が税込で 770 万円とします。消費税の課税事業者になると売上で預かった消費税 30 万円と経費で支払った消費税 70 万円の差額40 万円が払い過ぎた消費税として還付されます。

免税事業者では、一切還付されません。

4.簡易課税をやめて還付を受ける

簡易課税とは、前々期の課税売上高が 5,000 万円以下の事業者が適用できる制度で、売上高に業種別の割合を乗じて消費税納税額を計算します。

先の例を飲食店とすると、簡易課税を選択していると、税抜きの売上高 300 万円×40%(業種別割合)×10%(消費税率)=12 万円の納税となります。簡易課税をやめて一般の課税事業者に戻れば 40 万円の消費税が還付されることになるのです。

重大な災害と同様なことがあった場合には、その期から簡易課税を取りやめることができるとされています。コロナの影響で売上高が 20%以上減少した場合は、重大な災害と同様な影響とされていますので、簡易課税の適用を売上が減少した期から取りやめすることができると解釈されています。

上記 3.と 4.の適用を受けるには、税務署に対して承認の申請が必要となります。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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