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会計の歩み

第321_1号 2021年2月

1.はじめに

会計とは、お金の動きを誰でもわかるように分類して集計して報告する業務です。この会計業務も時代とともに変化を遂げ、現在も進化し続けています。私が会計を初めて 40 年ほど経ちましたが、その間の会計の歩みを説明いたします。

2.手書きの帳簿

簿記の教科書にある原始的な会計方式が手書きの帳簿です。お金の入出金に売上高や交通費などの勘定科目をつけて帳簿に手書きで記入して、一ヵ月の各勘定科目を電卓で合計して科目の一覧表を作成します。これを試算表と言いますが、手計算ですとこの計算が合わないのです。差額が出るとすべての勘定科目を見直してチェックして、再集計してやっと合わせるというのが日常茶飯事でした。もうやっていられません。

3.会計機

私が初めに就職した外資系会計事務所のあるクライアントでは、会計機というものを使っていました。機織り機を小さくしたような機械で、打つたびに「バキン バキン」と大きな音を立てて厚紙に数字を打刻していきます。その構造は不明ですが、勘定科目ごとに数字を印字する大きなタイプライターのように記憶しています。

4.穿孔テープ

2番目に就職した会計事務所では、レジシートのような紙に機械で複数の穴をあけて会計情報を記録して、その穿孔テープを紙の元帳に印刷してくれる会社に持ち込んで元帳を作成してもらっていました。

5.会計専用機

会計専門のコンピューターです。プリンターも付いていますので、会計事務所で元帳を作成できます。この機械が高価で1台数百万円もしていました。したがって台数が少なく、順番待ちで入力していました。この時代が長く続きましたが、パソコンの普及とともに会計ソフトが出始めます。

6.パソコン会計ソフト

8インチのフロッピーディスクにソフトが格納されていて、入力して Enter キーを押して読み込むのに数秒かかるような動きがその初期のものでした。ソフト自体も 50 万円以上していました。次第に価格も安くなり一人1台の時代となります。記憶媒体もハードディスクとなりスピードも格段と速くなりました。

7.クラウド会計

パソコンにソフトを格納しないで、ネット上のソフトにアクセスして会計処理をするのがクラウド会計です。一時期、ASP 会計としてクラウド会計と同じようなサービスが提供されましたが、淘汰されてしまいました。クラウド会計が現在普及しているのは、銀行預金のデータを自動で読みに行ったり、クレジットカードのデータを自動で取りに行ったりすることができるからです。会計はお金の動きに勘定科目を付けることから始まりますが、それをソフトがやってくれるのです。

科目印と電卓とペンで奮闘していた時期とは隔世の感がありますが、この流れに乗らない手はありません。次は、RPA(Robotic Process Automation)による事務の自動化が会計事務所の課題となりそうです。

アトラス総合事務所 公認会計士・税理士 井上 修
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