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医療費控除

第321_2号 2021年2月

1.はじめに

欧米に約 2 ヶ月遅れて、ようやく 2 月 17 日から、新型コロナのワクチン接種が始まります。

まずは医療従事者への接種、次に 4 月以降に 65歳以上の高齢者、最後に一般の人は 6 月以降の接種開始が予定されています。

このワクチン接種は無料で受けることができますが、コロナに関連して、マスクを購入したときの費用やPCR検査費用などは、医療費控除の対象となるのでしょうか?

2.医療費控除とは?

医療費控除とは個人の所得税の計算上、所得から控除できるものの 1 つであり、医療費控除の金額は、次のように計算します。

(注 1) (注 2)
その年に支払った医療費総額 1 0万円
  • (注 1)保険金等で補填される金額は除きます。
  • (注 2)その年の総所得金額等が 200 万円未満の人は、総所得金額等の 5%。

3.医療費控除の対象となる医療費とは?

医療費控除の対象となる医療費は、例えば、次のようなものが該当します。

  1. 医師等による診療又は治療の対価
  2. 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価

「治療」「療養」のためにかかった費用が対象となるため、例えば、健康維持を目的とするビタミン剤の購入費用など、病気の「予防」のための費用は医療費控除の対象となりません。

また、人間ドックや健康診断(以下「健康診断等」といいます。)の費用も疾病の「治療」を行うものではないため、原則として医療費控除の対象となりません。

ただし、健康診断等の結果、重大な疾病が発見され、かつ、その診断に引き続きその疾病の治療を行った場合には、その健康診断等は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるため、健康診断等の費用も医療費控除の対象となります。

では、これらの考え方を踏まえ、コロナに関連した次のものは医療費控除の対象となるのでしょうか?

4.マスク購入費用

マスクについては、病気の感染予防を目的に着用するものであり、上記 3.①②のいずれにも該当しないため、医療費控除の対象となりません。

5.PCR検査費用

次の①②それぞれのケースに応じて、取扱いが異なります。

① 医師等の判断により検査を受けた場合
コロナ感染の疑いがある人に対して行うPCR検査など、医師等の判断により受けた検査費用は上記 3.①に該当するため、医療費控除の対象となります。
② ①以外(自己の判断)の場合
単に感染していないことを明らかにする目的で受けるなど、自己の判断により受けた検査費用は上記 3.①②のいずれにも該当しないため、医療費控除の対象となりません。

ただし、PCR検査の結果、「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるため、その検査費用は医療費控除の対象となります。

アトラス総合事務所 税務部門 黒川 洋介
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