週刊節税教室

不動産管理会社(3)

法人税、所得税、相続税
第141号 2004/7/5

☆質問

『個人から法人に不動産を移す奥の手があると前回言っていましたが、

その奥の手を教えてください』

★回答

個人で所有している賃貸不動産の土地と建物を法人に時価で譲渡する

のは資金的にも税金的にも大変です。

そこで、土地は個人のままで建物だけを法人に譲渡する方法があるの

です。

☆質問

『建物だけを法人に譲渡するとどのようなことになるのですか?』

★回答

建物を法人に譲渡すると、今まで個人で受け取っていた家賃収入は法

人が受け取ることになります。

これで家賃収入は完全に個人から法人に移行することができるのです。

☆質問

『なるほど。しかし、土地は個人のままですよね?』

★回答

そうです。土地は個人所有のままですから、建物を買った法人が個人か

らその敷地である土地を借りることになります。

☆質問

『個人の土地の上に法人の建物があることになりますから、借地権の問

題があるのではないですか?』

★回答

そのとおりです。

そこで、個人と法人とで税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を

提出します。

この届出は、土地を借りている法人が将来その土地を無償で(本来であ

れば立退き料をもらえる)個人に返還するという届出で、この届出を出すと

借地権の問題はなくなります。

☆質問

『では、法人が個人に支払う地代はどのように決めたらよいのですか?』

★回答

法人が個人に支払う地代はなるべく低くします。

つまり、個人の所得が多くならないようにするのです。

一方で、法人は家賃収入を得て、個人へ支払う地代は少なくするので、

法人に多くの所得がプールされることになります。

法人は、その所得を家族役員に給与として支払うわけです。

☆質問

『なるほど、ではもし土地の所有者である個人に相続があった場合の扱い

はどうなりますか?』

★回答

個人が所有する土地の相続税評価は、更地としての評価額の2割引きと

なります。

「土地の無償返還に関する届出書」を提出した土地の相続税の評価は、土

地の賃貸借の場合は更地評価額の2割引となるのです。

ここで注意しなければならないのは、法人が支払う地代の額がその土地の

固定資産税の金額の2.5倍以上でないと、土地の賃貸借と扱われず、土地の

使用貸借とされてしまうことです。

土地が使用貸借とされると、土地の相続税評価は更地価格となり、2割引

の恩典は受けられないのです。

ですから、法人から個人に支払う地代は、低くすれば有利と言ってもその土

地の固定資産税相当額の2.5倍以上の地代にする必要があります。

☆質問

『いや、よく分かりました』

『建物だけを法人に譲渡するのであれば、金額もたかが知れているし、簿価

で譲渡すれば譲渡にかかる税金も発生しませんもんね?』

★回答

そうですね。一考の価値はありそうですね。

その時は、当事務所へご連絡ください。

http://www.cpainoue.com/

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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