週刊節税教室

LLPは本当に税金が有利?(1)

所得税、法人税
第199号 2005/9/26

☆質問

「会社を作ろうと思っています」

「新しくできたLLP(有限責任事業組合)と株式会社のどちらにしようか迷っ

ています」

「どちらが良いでしょうか?」

★回答

「まず、会社を設立してどのようなことをやろうとお考えですか?」

☆質問

「友人と2人でコンピュータのコンサルティングをやろうと思っています」

★回答

「現在は、お勤めですか?」

☆質問

「はい、2人とも同じ会社に勤めています」

「しかし、今月末に2人とも退職して、会社を立ち上げようということです」

★回答

「なるほど」

「ところで、なぜLLPが会社設立の選択肢の一つになったのですか?」

☆質問

「なんか、簡単に作れて、LLPで生じた損失も自分たちの所得から引け

るということで、節税になるような感じだからです」

★回答

「ん~」

☆質問

「節税になりませんか?」

★回答

「LLPと有限会社との一番の違いは、組織で儲けた利益や損失が、組織

の構成員個々人に直接帰属(LLP)するか、組織自体に帰属(株式会社)

するかということです」

☆質問

「はい」

★回答

「そこで、まず組織で利益が出た場合の節税効果について考えて見まし

ょう」

「組織で利益が出ると、LLPでは事業所得や不動産所得といった形で構

成員個人に課税されます」

☆質問

「はい、わかります」

★回答

「一方、株式会社で利益が出て、その利益を全てその組織の構成員で

ある役員に、役員報酬という形で分配したとします」

「そうすると、株式会社の構成員である個人は、会社の利益を給与所得

という形で受け取ることになります」

☆質問

「LLPでは組織の利益を事業所得や不動産所得で個人がもらい、株式

会社では給与所得としてもらうということですね」

「で、どっちが税金が有利なのですか?」

★回答

「事業所得や不動産所得では、収入から実際に使った経費を差し引いて

所得が計算されますが、給与所得では実際に使っていないけれども経費

としてみなされている給与所得控除があります」

☆質問

「なるほど、組織で計上した収益-経費=所得がそのまま個人の所得に

なるのがLLPで、収益-経費-給与所得控除=所得になるのが株式会社

ということですか?」

★回答

「そのとおりです」

「よく理解しましたね」

☆質問

「ということは、組織で利益が出た場合は、給与所得でもらえる株式会社

の方が得であるということですね?」

★回答

「このケースでは、そういうことが言えそうです」

次回は、このケースを具体的な数値例で説明しましょう。

なお、LLPに関する詳細な税制については、税務署に聞いても「まだ詳細

が決まっていません」と言われ、LLPのセミナーに出席して具体的な税金

の扱いを著名なセミナーの講師に聞いても「詳細はまだ決まっていないの

で、回答できません」といった状態です。

ですから、このメルマガの情報も、私の私見であることをご理解ください。

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

無断転用・転載を禁止します。

本メールマガジンに掲載されている著作物に対する以下の行為は、著作権法上禁止されており、著作権侵害になります。

  • ○著作物を、私的利用の範囲を超えて権利者の許可なく複製する行為
  • ○著作物を、インターネット上で公衆が取得可能な状態にする行為
  • ○著作物の全部もしくは一部を権利者の許可なく改変する行為