週刊節税教室

貸倒損失と時効

法人税・所得税
第317号 2008/3/3

☆質問

「前回は、時効期間が経過している商品代金の未払いについての話

でした」

★回答

「そうでしたね」

「時効期間が経過した場合の債務者の対応としては、時効の援用と

時効の利益の放棄があるということでしたね」

☆質問

「時効の援用は、もう支払いませんということで、時効の利益の放棄

は、まだ支払います、ということでした」

「ところで、前回は債務者側の扱いを説明してもらいましたが、債権

者側の扱いはどうなるのですか?」

★回答

「なるほど」

「債権者側では、時効にかかった債権が貸倒損失として処理できるか

どうかということが問題となります」

☆質問

「債務者側では、債務免除益という益金計上の問題でしたが、債権者

側では、貸倒損失という損金計上の問題ということですね?」

★回答

「そのとおりです」

☆質問

「債務者が時効の利益を放棄をしたら、債権者にとってはまだ所有す

る債権が回収可能であるということですから、貸倒損失を計上すること

はできませんね?」

★回答

「そういうことになるでしょう」

☆質問

「一方、債務者が時効の援用をして、もう支払わないという意思表示を

した場合には、債権者は債権が回収不能として貸倒損失を計上するこ

とができますね?」

★回答

「法律上は債権が回収不能となったわけですから、自動的に貸倒損失

が計上できると思うかもしれませんが、なぜそのような事態になったの

かということが税務上は重要になります。」

☆質問

「時効になって回収不能になった理由ですか?」

★回答

「そうです」

「時効の進行を停止させたり、中断させるなどの回収努力もせずに、時

効になった場合には、債権者が債務者にお金をただであげてしまった

とみなされて、貸倒損失ではなくて寄附金とみなされることもあるのです」

☆質問

「へ~ 税務ではそんなふうに考えるのですね?」

★回答

「特に親子会社間や関係会社間で、そのような取引をすると寄附金では

ないかと疑われやすいのです」

☆質問

「寄附金とされたら、損金算入限度額があるから節税になりませんね?」

★回答

「そのとおりです」

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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