週刊税務調査日記

相続税の調査(2)

第31号 2002/10/7

相続税の調査に、男女2人の調査官が納税者の自宅に来ています。

個人の手帳を要求してきました。

●税務署

「ご主人様は株式の取引をやられていましたね」と手帳を見ながら納税者に聞いています。

▲納税者

「はい、株は好きでしたから良くやっていました」

●税務署

「どちらの証券会社をお使いでしたか?」

▲納税者

「○○証券です」

●税務署

「他にはありませんか?」

▲納税者

「ありません」

このやり取りももう1人の女性の調査官がこまめにメモをしています。

こうして聞き取り調査をした事実と、申告データとをチェックして申告漏れがないかどうかを確認するのでしょう。

▲納税者

「先生お茶にしましょう」とお茶を入れに納税者が席を立ちました。

すると調査官が私に質問を浴びせてきました。

●税務署

「土地の評価の件なのですけれども、先生はどのようなお考えでこの土地を小規模事業用宅地として評価されたのですか?」

■会計事務所

「床面積及び年間の賃料から見て事業的規模と判断したからです」と

回答しました。

納税者の前ではちょっと聞きにくいこととか、税理士の判断基づくことで税理士に都合の悪くなる可能性があることを話す場合には、こうして納税者がいない時に調査官から話を受けることがあります。

調査官が客商売である税理士に気を使ってくれているということです。

税理士にとってはありがたいことです。

私の友人の税理士は、税務調査時に調査官が税理士の判断ミスを納税者の前で嫌みたっぷりに言われて、まるっきり立場がなくなってしまったということもききました。

これはちょっと困りますよね。

お茶も終わり、調査再開です。

●税務署

「ご主人様の銀行通帳を見せてください」

納税者は通帳を全て机の上に並べました。

調査官は申告書に記載してある銀行口座と通帳をチェックしていきます。

そして、後日各銀行に行き故人の口座の過去の取引資料を入手して、預金の流れや、振込先、入金先をこまめにチェックして疑問点を洗い出します。

例えば、数年前の銀行記録に、申告書に記載のない証券会社への振込みがあったような場合には、その証券会社に現在も株式が保管されていないか調べます。

また、過去において故人の通帳から相続人である配偶者や子供に多額の資金移動が判明した場合には、その時点で贈与税の申告があったか否かが調査され、場合によっては故人の相続財産に取り込まれることになります。

それと、数年間の総収入と通常必要な支出金額から相続時点にあるべき預金額を算出して、実際預金額との差異を検証することにより、申告漏れ財産を把握することもします。

ですから、故人が亡くなる前に財産を移動して相続財産を少なくしようとしても、銀行記録を調べればあらかた税務署に分かってしまうわけです。

       To be continued. 

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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