週刊税務調査日記

相続税の調査(5)

第34号 2002/10/28

税務署が故人のお兄さんの持っている株が名義だけお兄さんで、実際は会社設立時にお金を出したのは故人ではなかったのかと疑っています。

税務署はお兄さんにまで既に直接電話で確認を入れています。

さっそくお兄さんに連絡をとってみます。

■会計事務所

「もしもし、会計事務所のものですが、弟さんの相続税の件で税務署から問い合わせがありましたか?」

▲お兄さん

「はい、ありました。突然○○税務署からということで気が動転しました」

「税務署の方は、私名義の××株式会社の株式について 、本当に私がお金を出したのかどうか聞いてきました」

■会計事務所

「それで何と答えましたか?」

▲お兄さん

「昔のことで記憶が定かではないのですが、たぶんお金は出していないと答えました」

■会計事務所

「本当にお金を出していないのですか?」

▲お兄さん

「いや、本当に記憶にないのです」

■会計事務所

「なるほどそうですか、分かりました。ありがとうございました。」

誰だってそんな昔のことを覚えているはずはありません。

今さらこんなことをほじくり返す税務署もどうかと思います。

「分からないものは分からない」のですから、その旨税務署に連絡することにしました。

●税務署

「いかがでしたか?」

■会計事務所

「お兄さんにも、納税者にも聞きましたが、お金を出したがどうかは分からないということです」

●税務署

「困りましたね。お兄さんの株は故人のものだと思いますがね」

■会計事務所

「事実関係が今となっては誰にも分からないわけですから、そんなこと言えないのではないですか?」

「推測で事実関係を決められてはかないません」

●税務署

「推測ではなくて、お兄さんも、多分お金を出していないと言っていましたし・・・」

■会計事務所

「いや、私が直接聞いたら、憶えていないと言っていました」

「単にそう言ったからで、株式を故人の持ち物と決め付けていいのですか?」

●税務署

「そうしたら、この件でもう一度調査しなくてはなりませんね・・・」

■会計事務所

「もう一度調査する」というのは、納税者と会計事務所に対してプレッシャーかけているに違いありません。

ここは負けてはいられません。

「どうぞお好きなようにしてください」

       To be continued. 

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
◆発行 アトラス総合事務所

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