週刊税務調査日記

拍子抜けした調査(4)

第343号 2009/6/19

退職していないのに退職金を計上したり、未払い計上した決算賞与をまだ支払っていないということを、納税者から調査前に告白されてしまいました。

いずれも税務調査では問題になるでしょう。

調査当日です。

●税務署

「おはようございます」

「よろしくお願いいたします」

50歳くらいの調査官です。

「調査は本日1日だけですので、手際よい調査をしなければなりません」

「そのためのご協力、よろしくお願いいたします」

かなり気合が入っています。

■会計事務所

「まぁ、お茶でもどうぞ!」

ここで世間話に乗ってくるかどうか探ってみます。

「最近の税務調査は広く浅くみたいですけれど、実際のところはどうなんですか?」

●税務署

「いや~ もう大変ですよ!」

「今週なんか月曜から金曜まで出ずっぱりです」

「今日だって1日の調査ですよ」

「この規模で考えられます?」

「今までであれば、2人で2日の調査ですよ、この規模では」

「それが私1人で調査は1日」

「考えられます?」

1人でしゃべって、1人で興奮してきました。

かなり話に乗ってくるタイプです。

さらに煽ります。

■会計事務所

「それは大変ですね」

「そんなに忙しくなっては、ストレスも溜まりますよね?」

●税務署

「そう、もう溜まりっぱなしですよ」

「上司は、今日はあっちに行け、明日はこっちに行け、と言うだけで、私の立場なんてぜんぜん考えていないですからね!」

「もう本当に厭になってしまいます」

「やってられません!」

内心、「仕事なのにな・・・」と思いつつ、同調します。

■会計事務所

「そうですよね」

「どこの組織も上司は口だけで、実際に足を使っている部下は大変ですよね」

「組織のことだけを考えるのではなくて、もっと手足となって働いている部下のことも考えるべきですよね?」

●税務署

「そのとおり!」

「やはり先生はよく分かっている」

「上司はまったくそのことが分かっていない!」

こんな調子で、約1時間が経ちました。

この後、会社の状況を雑談を交えて聞いて、もうお昼。

帳簿調査はまだ何もやっていません。

つづく

公認会計士・税理士・行政書士
井上 修
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